人生58年。20代で結婚し、40代で離婚。数々の失敗と選択を経て見えてきた「本当の豊かさ」と、自分らしく生きるための価値基準を、具体例とともに共有する。
実は、私たちが「幸せの王道」だと信じてきた生き方は、必ずしも充実を保証しない。結婚・子育て・安定した職という規範に沿うほど、他者の期待と自分の本心の距離が見えにくくなるからだ。
私は20代で結婚し、40代で離婚を経験した。家庭生活の協調と責任、離婚後の独立と再構築——その双方を通じて、「基準を自分で定めること」こそ満足感の源泉だと痛感した。失敗は損失ではなく、価値観を研ぎ澄ます素材である。
働き方も会社員とフリーランスを往復し、挫折も成功も等身大で受け止めてきた。制度や常識の外側に身を置いたときだけ見える景色がある。本稿では、経験から得た知恵、失敗から抽出した原則、そして結婚・離婚・独身期それぞれで育った視点を、具体的エピソードを交えながら解説する。
本稿が、他人の尺度から距離を取り、「目的→基準→選択」を自分の言葉で言語化する一助となれば幸いだ。失敗を前進の燃料に変える勇気も、きっと手に入る。
1. 仕事で学んだ「本当の成功」の定義
会社員としては昇進や評価、フリーランスとしては収入の変動——重視すべき物差しは常に更新を迫ってきた。行き着いた結論は明快だ。成功とは「年収や肩書」ではなく、自分の目的に対して資源(時間・集中・関係性)を適切に配分できている状態である。
現在は50代として退職を見据えた準備段階にある(※現職は継続)。収入の安定のみを最優先に置く発想を一部見直し、意思決定と時間配分を自分で握る体制へ段階的に移行している。すでにアウトプットの質と主観的満足度は向上している。
2. 人間関係で培った「距離感」の設計
結婚生活で学んだのは、期待の明文化と役割の交渉である。沈黙は合意ではない。離婚後は友人関係・仕事関係でも**境界線(boundary)**を意識し、依存ではなく相互尊重を基準に再設計した。近すぎず遠すぎない距離感は摩擦を減らし、関係の寿命を延ばす。
3. 失敗から鍛えた「回復力(レジリエンス)」の育て方
起業に関する資金繰りの判断ミスは痛手だったが、振り返りのフレームを持てば武器になる。
- 目的:何を実現したかったのか。
- 基準:意思決定の評価軸は妥当だったか。
- 選択:当時の代替案は何だったか。
この3点を事後的に検証し、次のプロジェクトへ再現可能な知見として転写する。理論だけでなく
「痛みの記憶」があるからこそ、他者の課題にもより具体的に寄り添える
4. 結婚・離婚・独身期が教えてくれた「自由」の定義
自由とは「好き勝手」ではない。結果に責任を持つ主体性である。
- 結婚は協調と対話の訓練場。
- 離婚は自立と再構築のブートキャンプ。
- 独身期は意思決定を磨くラボ。
どの段階にも価値がある。フェーズごとに基準を更新してきたことが、現在の安定につながっている。
5. 日常の小さな幸せの資産化
朝の一杯、仕事相手の一言、移動中の空の色。可処分時間の数%を「感受性」へ投資すると、幸福度の分散は下がる。大きなイベントに依存せず日々の微差を拾う力は、景気や環境変化に強い心理的ポートフォリオを形成する。
まとめ
正解がないからこそ、人生は設計可能だ。結婚で得た協調性と配慮、離婚で得た自立心と決断力、仕事で育てた再現性と回復力。これらを束ねる核は、「目的→基準→選択」を自分の言葉で可視化することにある。社会の型に合わせるのではなく、自分の指標で挑戦を続ける——その過程に、真の豊かさがある。人生は続く。次の一歩も、自分の基準で。